| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-129 (Poster presentation)
人間活動は様々な生態系において、生物多様性を減少させてきた。しかし、畑や牧草地などの二次的自然では、むしろ人間活動が生物多様性を増加させてきた側面もある。また、日本における二次的自然の代表である里山の多くでは、伝統的農業活動によって生物多様性が維持されてきた。しかし現在、残存する里山において、都市化や農業集約化により、生物多様性は減少しているとの報告がある。さらに、人口減少や高齢化による農業従事者の減少により、里山生態系が放棄され、多くの残存する里山の生物多様性は減少している。さらに、都市域においても、その縮退や人口減少が起こると予測されており、これにより、都市近郊の里山もいずれ放棄されることが予測される。とりわけ都市住民は、里山から様々な恩恵を享受していることからも、都市近郊の里山生態系の放棄に対応していくことが必要である。しかし、放棄の問題に対応する手段として、里山の伝統的農業活動を再導入することは、人口動態の変化からも、必ずしも現実的ではない。
そこで、残存する里山生態系の生物多様性を維持できる代替利用の一つとして、本研究は、里山生態系の大規模な土地改変を伴わず、元の里山環境を活かした、自然立地的な公園利用に焦点を当てた。公園利用の管理は、安全や景観を維持する為に行われており、農業利用における管理と目的は異なるが、管理方法に類似性が認められる。
本調査は、神奈川県東部の里山由来の残存緑地を対象にし、3つの異なる土地利用(農業利用、公園利用、放棄地)を含んだ計14地点において、2017年の初夏(5月~7月)、秋(9月~10月)に、植物とチョウ類の調査を行った。そこから、3つの異なる土地利用において、多様性や種組成の違いを明らかにした上で、里山生態系の公園利用のこれからの可能性について議論したい。