| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-135 (Poster presentation)
北東アジア乾燥地の砂地草原において適用されてきた砂丘固定技術には、持続的な生産活動の再開を可能にする植生回復の促進、および風食の軽減が求められる。乾燥地の特徴である変動性の高い降雨は、植生動態に影響を及ぼすことから、植生の風食軽減効果は降水量の変動に伴って変化する恐れがある。また、植生に被覆された地表面における風食の発生に関する研究は少なく、とくに現地調査に基づく植生と風食の関係の検討は十分でない。したがって、本研究では異なる植被率の植生条件下における、複数年の侵食量・臨界風速の同時観測を通して、植生の動態に影響を及ぼす要因、およびその植生の風食軽減効果を検討すること目的とした。
対象地の中国内蒙古フルンボイル草原では、植生回復に向けた砂丘固定事業として、草方格・禁牧柵の設置、在来牧草の播種が実施されている。そこで、施工内容および施工時期の異なる砂丘を複数箇所選定し、植生調査、土壌調査、気象観測およびエロージョンピン・圧電飛砂計による土壌侵食・堆積量調査を行った。解析では植被率に関して施工区ごとの経年変化を比較し、とくに播種された2種の在来牧草Caragana microphyllaとElymus spp.の成長を比較した。また土壌侵食・堆積量、臨界風速についてと植被との関係を調べた。
その結果、干ばつの年であった2016年において、播種区での植被率が有意に低かった。この年を境に播種の施工年度間で、播種種のC. microphyllaの生育に異なる傾向が見られた。以上より、干ばつ時には非平衡環境の特徴が強く現れ気候要因が支配的となること、播種直後の個体群は降雨変動性に対して脆弱であることが示唆された。また、それらの植生においては、変動した植生においても流動砂丘に比べ一定の風食軽減効果が認められた。飛砂数と植被率との関係は閾値的に変化し、植被率の増加で臨界風速が増加することが示唆された。