| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-137  (Poster presentation)

風倒攪乱において、風倒木搬出や地ごしらえに伴うシカの採食が森林の回復に与える影響

*杉浦澪(北海道大学), 森本淳子(北大院農学研究院), 中村太士(北大院農学研究院)

自然攪乱は森林生態系において重要な役割を担っている。日本の主要な自然攪乱の一つ
に風倒攪乱があり、風倒攪乱後は一般的に、倒木や枯死木を収穫・除去するsalvage
loggingや、苗木植栽のために枝条や根株を植栽列から撤去する地ごしらえが行われてきた
。これまで、風倒後の施業が森林再生過程に与える影響を評価する研究が進められて
きたが、近年では、施業そのものの影響だけではなく、施業が副次的に引き起
こすシカ採食の影響も含まれていた。そこで本研究では、2004年の台風18
号により壊滅的被害を受けたトドマツ人工林において、施業そのものと、副次的に生じた
シカ採食圧が森林再生過程に与える影響をそれぞれ区別して、総合的な評価を行った。
風倒後に倒木を残置したA区、倒木を残置しさらにシカ防除柵を設置したAf区、施業を
行ったB区、施業後にシカ防除柵を設置したBf区の4つの処理区を設定し、それぞれ
2m×2mのプロットを16、5、24、24箇所設置した。各プロットで総合現存量(=プロット
内最大植物高(cm)×植物全体の植被率(%))、出現種、土壌含水率(%)、倒木量(=地表面か
ら倒木表面までの高さ(cm)×倒木被覆率(%))、相対光量子量(=プロット内光量子量/全天
条件での光量子量)(%)を測定し、総合現存量については各処理区に有意差があるかを、
出現種や環境要因についてはDCA、CCA解析を行った。
A、Af区間では総合現存量や種構成に有意な差がなく、倒木が長期にわたってシカ採食を
抑制する効果を持つことが分かった。また、倒木を残置したA、Af区では総合現存量が有意
に大きくなり、種構成は前生樹をはじめとした耐陰性木本種が主となった。これに対して
施業を行ったB、Bf区では非耐陰性木本種や草本種が優占した。さらにシカ採食を受けたB区では遷移が停滞し外来草本が繁茂、現存量も小さくなったが、シカ採食を受けなかっ
たBf区では施業を行っていてもA区と同程度の現存量の回復が見られた。


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