| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-141 (Poster presentation)
在来種と近縁な外来種の間では雑種が生じる事例が報告されている.ただし,雑種に稔性がある場合と稔性が無いもしくは低下する場合がある.前者の場合,雑種との継続的な交雑により在来種の存続を脅かす可能性がある.日本固有種のニホンイシガメと外来種のクサガメも,交雑し雑種を形成することが知られている.この雑種第一代は稔性を持つが,雑種第二代以降も稔性を持ち続けるかは明らかになっていない.雑種が稔性を持ち続け遺伝子浸透が深く進行する場合,形態的特徴とミトコンドリアの由来が一致しない個体が存在すことが予想される.本研究では,形態的特徴とミトコンドリアDNA(mtDNA)の配列情報をもとに,雑種の稔性の持続に伴う浸透交雑が進行しているかを検証した.2014年から2017年にかけて千葉県,福井県,徳島県の3県,計7調査地域で捕獲調査を行い,1384個体を捕獲した.これらの個体について,10の形態形質を選定し点数化することで,イシガメ,クサガメ,雑種に分類した.このうち,541個体については,mtDNAがクサガメとイシガメどちらのものかを判定し,形態形質の点数と対応させた.その結果,イシガメが多く生息し,交雑も盛んに生じていると考えられる地域から形態的にはクサガメだがイシガメのmtDNAを有する3個体と,形態的にはイシガメだがクサガメのmtDNAを有する1個体が検出された.このことから,イシガメとクサガメの間で生じる雑種は複数世代経ても稔性を持ち続け,形態的特徴とmtDNAの由来が一致しないほど遺伝子浸透が進行することが明らかとなった.