| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-143 (Poster presentation)
環境DNA分析手法が近年注目を集めている。本手法は、非侵襲的で迅速、かつ広範囲な調査が可能である。生物の在/不在検出のみならず生物量推定にも用いられており、水産重要種や外来種の正確な生物量推定が可能になれば、水産や保全の面で有用である。しかし、現状の環境DNA分析による生物量推定は、DNAの希釈や分解の効果を受けるために正確な推定が難しい。例えば希釈の効果についても、どういった流況のときに採水を行うのが適切かについての知見がないため、平水時に採水するという対応しかできていないのが現状である。本研究では流量が同じという条件さえ満たせば環境DNA濃度も同じ濃度になるのかについて基礎的知見を得るため、同生物量条件において流量が異なると環境DNA濃度に影響があるか、また流量の変化履歴は環境DNA濃度に影響を及ぼすかを水槽実験で検討した。
ゼブラフィッシュ( Danio rerio )を飼育水槽で3日間馴致させた後、飼育水槽から各実験水槽への給水量を流量が異なる0.32ml/minと20ml/minの2条件になるよう調整し給水した。その1日後に全ての実験水槽の流量が同じになるよう、両条件とも14時間かけて2.5ml/minへ少しずつ調整した。給水し始めてから1日後、流量が2.5ml/minに到達した直後(0時間後)、そこから1、3、6、12、18、24時間後、さらに1日おきに5日後まで採水し、時系列的な環境DNA濃度の変化を観察した。流量を多くした実験水槽と流量を少なくした実験水槽との間には、0時間後まで環境DNA濃度が異なることが示された。しかし、1時間後には環境DNA濃度に差は見られなくなった。
以上の結果から、環境DNA濃度は流量によって影響を受けること、また平水時であっても環境DNA濃度が流量の変化履歴の影響を受けていることが示唆された。これらのことから、流量の変化履歴を考慮して採水を行う事が必要であると考えられる。