| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-147 (Poster presentation)
近年、生態系の保全や、人々の健康・福利の向上といった観点から、都市における生物多様性保全が重要な課題になっている。これまで都市の生物多様性保全に関する研究では、大規模緑地と比べ、小規模緑地はその保全上の重要性があまり注目されてこなかった。しかし、小規模緑地が持つ面的規模や空間的広がりを考慮すると、それらは野生生物の重要な生息地として機能している可能性がある。そこで本研究では、景観内に広く分布する普通鳥類を指標とし、(1)大規模緑地と比較したときの小規模緑地の生態学的価値の評価と、(2)それらに影響する環境要因の特定を目的とした。
本研究ではまず始めに、既存データを用いた解析を行い、大規模緑地と比べて小規模緑地がどれほど鳥類に利用されているのかを調べた。具体的には、都内の60箇所の緑地における鳥類データを分析し、大規模緑地と小規模緑地における各鳥類種の単位面積あたりの個体数(利用度)を比較した。次に現地調査を行い、小規模緑地内外の環境が鳥類個体数に与える影響を調べた。2017年10-12月の間に、都内26カ所の小規模緑地に生息する普通鳥類の個体数および緑地内外の環境要因(GISによる景観要因の計測も含む)を記録した。そして、一般化線形モデルにより、鳥類個体数に影響を及ぼす環境要因を調べた。
既存データの解析の結果、多くの普通鳥類は、大規模緑地よりも小規模緑地で利用度が高いことが示された。また現地調査の結果から、小規模緑地に生息する鳥類の個体数は、緑地間で大きなばらつきがあり、それらはいくつかの環境要因(緑地内外の樹林面積や草地面積など)で説明できることが分かった。以上の結果から、小規模都市緑地は、都市に生息する普通鳥類にとって重要な生息地になり得ることが示唆された。そのため、今後都市の生物多様性を保全するためには、大規模緑地のみならず小規模緑地の保全にも注力するべきであろう。