| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-148 (Poster presentation)
都市域の水循環の健全化と洪水リスクの低減が希求される中、都市のグリーンインフラとして、雨水流出抑制効果を持つ雨庭が注目されている。雨庭とは不透水面に降った雨水を集め、一時的に貯留する窪地等を備え、漸次地中に浸透させる緑地である。欧米都市で急速に普及し、国内での整備も始まりつつある。しかし、雨庭の雨水流出抑制効果の定量評価が不十分であり、効果の検証ができていない。
そこで京都学園大学太秦キャンパスの2つの雨庭(以下、雨庭1,2)を対象に雨水流出抑制効果を判断するために貯留浸透機能の定量評価を試みた。雨庭1は浅い窪地を有し、湛水面積は礫被覆地の約50m2、集水面積は約300m2、貯留容量は約4m3、一方、雨庭2はやや深い窪地を有し、湛水面積は礫被覆地の約30m2と芝地約30m2で、集水面積は約700m2、貯留容量は約14m3である。測定期間は2017年7月14日~11月25日とし、雨量、湛水深、浸透能等を実測した。本発表では台風を含む幾つかの降雨パターンが認められた10月のデータを分析した。
その結果、計3回の降雨イベント(総降雨量154mm、30mm、59mm)に対し、オーバーフローは雨庭1で3回、雨庭2で1回確認された。また、降雨に伴い雨庭1、2ともに水位が上昇するが、降雨後、雨庭1では地表面より約7cm高い位置で水面が滞留したのに対し、雨庭2では半日以内で地中に浸透した。降雨後の湛水深の変化から浸透能を計算した結果、雨庭1が約10mm/hr、雨庭2が約40mm/hrであった。現場透水試験による浸透能(注水後40分間の値)でも、雨庭1の礫被覆地で0mm/hr(3地点)、雨庭2の礫被覆地で9~114mm/hr(3地点)、雨庭2の芝生地で63~96mm/hr(4地点)となり、雨庭2の方が雨庭1よりも浸透しやすいことが示された。以上から、雨庭2の方が高い雨水流出抑制効果を持つと考えられ、土地被覆や雨庭の構造等の違いにより、その効果に差が生じる可能性が示唆された。