| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-150  (Poster presentation)

植物のダスト発生抑制効果は形状によって異なるのか?

*宮脇真美(鳥取大学農学部), 劉佳啓(乾燥地研究センター), 木村玲二(乾燥地研究センター), 衣笠利彦(鳥取大学農学部)

風食にともなうダスト発生は多くの乾燥・半乾燥地域において深刻な問題のひとつであり、これまで様々な予測モデルの構築が試みられてきた。しかしダスト発生の予測モデルは未だ不確実な部分が多く、モデルの予測精度を向上させるにはより細かな地表面状態のパラメータ化が必要である。地表面状態パラメータの中でも植生は年間を通して存在し、人為的活動や環境変化による影響を大きく受ける。植物体には砂を捕集しダスト発生を抑制する効果(サンドトラップ能力)があるが、どのような植物がどの程度のサンドトラップ能力を持つのかよくわかっていない。先行研究で、風食抑制能力は植物体の形態的特徴によって異なることが示唆されており、サンドトラップ能力も植物体の形状によって異なる可能性がある。そこで本研究では、植物体を模した異なる形状の物体を用い、植物体の形状がサンドトラップ能力に与える影響を検討した。実験には風洞を使用し、物体の形状による砂堆積量の違いを調べ、その違いが被覆率にともなってどう変化するのか調べた。実験には、水平投影面積と側方面積を9π㎠に統一した球、円柱、円錐、逆円錐形の模型を用いた。風洞内に模型を1個および被覆率3%、9%、14%、22%に相当するように設置し、風速8 、12 ms-1の風を5分流した後、砂の堆積量および堆積面積を測定した。1個の物体による砂の堆積量および堆積面積は球・円柱で有意に多く、円錐・逆円錐ではほとんど堆積しなかった。被覆率が上がるにつれ全ての形状で堆積量は増加し、堆積量が少なかった円錐・逆円錐形でも、被覆率22%において他形状とほぼ同程度まで堆積した。以上から、サンドトラップ能力は植物体の形状によって異なることが示された。また形状による砂堆積量の違いは、特に被覆率が低い乾燥・半乾燥地域で顕著に表れ、ダスト発生に影響すると考えられた。


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