| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-151 (Poster presentation)
近年の気候変動にともない、干ばつや洪水といった自然災害の頻度が高まると予測されている。特に、河川生態系は洪水や干ばつの影響を受けやすく、新たに発生する大規模攪乱の影響評価が急務になっている。これまで北海道に台風が来ることは希であったが、2016年8月には大型の台風3つが北海道中央部・東部に上陸した。特に台風10号は2日間で約600mmの降雨をもたらした。多くの河川で土砂流が押し寄せ河畔林を削り、河床の土砂は一新された。
本研究では、この大規模攪乱が河川生物群集に与える影響を15河川で評価した。まず、土砂流が起きた河川ではカゲロウ、トビケラ、カワゲラがほとんど見られなかった。一方、河川勾配の緩い小支流では土砂流が発生しておらず、底生無脊椎動物も豊富に存在していた。台風前の6月と台風後の10-11月の魚類の個体数を比較したところ、ほとんどの河川で大きな減少はほとんど見られなかった。土砂流などの大きな攪乱があった河川でさえ、サケ科魚類だけでなくカジカやフクドジョウといった底生魚類も数多く認められた。本研究から、同一水系内という小さいスケールにも関わらず河川ごとに攪乱の影響が大きく異なること、魚類は強い洪水耐性があること、環境の異質性が河川生物の頑健性を高めること、が示唆された。