| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-152  (Poster presentation)

潮干狩り場におけるアサリ資源管理の持続可能性

*山本彩華, 沼田真也, 保坂哲朗(首都大学東京)

 潮干狩りは春から夏にかけて干潟で行われるレジャーの1つだが、近年全国的に開催の中止が相次いでいる。中止の理由としては貝毒の発生や台風による被害だけでなく、主な収穫対象であるアサリ(Ruditapes philippinarum)の生育不良および個体数の不足も含まれる。こうした中、複数の潮干狩り場では、輸入したアサリを人工的に播くことで資源の不足を補っているが、播く量や頻度等の情報は公開されておらず、潮干狩り場におけるアサリの資源管理について不明な点が多い。
 本研究では、潮干狩り場におけるアサリの資源管理の現状を明らかにするため、アサリを人工的に播いて運営を行っている潮干狩り場(千葉県船橋市三番瀬)に聞き取り調査を行い、播く量と頻度、事業費や来場客数と収穫量についての情報を得た。そして、食害等による死亡率の情報をもとに、年内および年間のアサリの資源量の変化を推定し、持続可能性について議論した。
 その結果、来場客による2012年から2017年の年間収穫量は38.7~71.5tと推定された。年によって収穫量に1.8倍以上の差が出たが、そのいずれもが推定される在来の資源量を上回った。年内の資源量の推移からは、5日~11日ごとに10~20t播くことによって資源量を0以上に保っていることが明らかになった。一方で年間の資源量に着目したところ、播いたアサリの40%以上が収穫されず干潟に残されていると推定された。しかし冬を越す成貝の割合が約10%と仮定した場合、収穫量の5分の1程度しか残存しないと推定された。以上より、潮干狩り場における人の手による収穫圧は極めて高く、人工的にアサリを播かなければ干潟に生育するアサリを1シーズンで根絶させてしまうことが示された。


日本生態学会