| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-008 (Poster presentation)
近年、竹林の著しい拡大が各地で報告されている。竹林の拡大は生物多様性の低下や土砂災害の危険の増加など様々な問題を引き起こす可能性が指摘されており、竹林の分布の把握が重要になっている。一方で、人力による竹林の分布の把握には大きな金銭的、時間的コストが生ずるため、広い範囲の分布状況を高い時間解像度で捉えることは未だに困難な状況である。
こうした困難を克服するための手法として本研究では、情報科学の分野で発展している、「深層学習」に注目し、衛星画像から竹林を自動識別することを目指した。深層学習とは生物の神経系を模したモデル(多層ニューラルネットワーク)に基づき、物体認識やグループ分けなどを人間に代わって機械が行うような技術を指す。深層学習の技術は様々な領域で発展してきたが、形状が不定形なものは学習が難しく、衛星画像中の植物群落の特定などにはまだ応用できていない。そこで、本研究ではコケ植物の種識別を目的に開発されたChopped picture method (画像を小さなグリッドに分割する方法;Ise et al., 2017)を衛星画像に応用することで、竹林の識別を試みた。識別にあたっては山口県山陽小野田市、京都府井手町、千葉県いすみ市周辺を対象地域とし、google earth から取得した1/500、1/1000、1/2500の3種類の縮尺の画像を56ピクセルの大きさに分割し、竹林とそれ以外のオブジェクトを識別した。識別後、各地域からランダムに100枚の画像を抽出し、目視で識別の正答率を判定した。縮尺は1/500、1/1000 の大きさでは9 割以上の正答率であったが、1/2500 では正答率が6割程度まで低下した。また、教師画像は同じ自治体内の竹林画像で作成した際は9 割以上の正答率であったが、他の自治体の竹林画像を教師画像とした際は識別率が7割程度まで低下した。以上のことから、深層学習はgoogle earth画像から竹林を高い精度で識別することが可能だが、その精度は画像の縮尺と教師画像の内容に大きく依存することが示唆された。