| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-009 (Poster presentation)
マングローブ林は海洋・大気圏との物質交換において重要な役割を担う。しかし、その基盤情報となる広域の森林構造は、膨大なフィールドワークを必要とすることや林内への立入規制が障壁となり、十分に理解されていない。また、それらを解決する衛星や航空機による観測も、金銭的負担や取得画像の解像度といった課題があった。そこで、近年急速に技術発展を遂げた無人航空機と空撮画像の三次元解析によりその課題の解決を試みた。本研究では、マングローブ林の森林動態の解明に向けて、無人航空機による森林構造の検出法の確立を目的とした。
沖縄県石垣島吹通川流域の林分を対象に、ドローン (Phantom4) を用いて空撮条件の検討(飛行高度・オーバーラップ率・ISO感度)を行った。また、合成したオルソ複合画像から画像解析により被覆面積・立木密度・林冠ギャップ面積を推定した (RGB解析)。さらにその画像から林冠表面標高 (DSM) を算出し、地表面標高 (DEM) の差から樹木高とバイオマスを推定した (DSM解析)。これらの値をフィールドワークで得た実測値と比較した。
空撮条件の検討において、飛行高度・オーバーラップ率は、それぞれ100 m以下・70%以上であれば、森林構造の検出に十分な画像であると判断された。一方でISO感度は、直射日光に大きく左右され、状況に応じた設定が必要であった。また、画像解析において、被覆面積は十分な精度の推定値が得られたが、立木密度は各個体の樹形や他個体との樹冠の重なりの影響を強く受け、実測値よりも過小に評価された。しかし、両者は有意な正の相関を示したことから、係数の設定により補正が可能であると判断された。ギャップ面積は、その特徴的な形状から、発生要因別に十分な精度で推定が可能であった。樹木高とバイオマスはDSM・DEMの両者の精度に依存し、さらなる改良が求められた。この他、八重山諸島の20箇所の林分を対象としたデータも含め、その動態について考察する。