| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-012  (Poster presentation)

環境条件、分散の制限および種間相互作用は半自然草地のメタ群集構造にどのように影響するか?

*丹野夕輝(静岡大・院, 株式会社エコリス), 山下雅幸(静岡大・院), 澤田均(静岡大・院)

環境条件と空間的なプロセス(例えば種子散布)および種間相互作用はいずれもメタ群集の構造を決定する要因と考えられている。しかし、これらの影響を日本の半自然草地で調査した研究は少ない。そこで本研究では、静岡県中西部の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)を対象に、種組成パターンを解析した。  静岡県菊川市および島田市の茶草場15カ所で、2012年7月から2013年6月に調査を行った。各茶草場にコドラート(2.25 m2)を2~12個ずつ設置し、コドラート内に出現した植物、開空率および土壌条件を記録した。出現頻度の高かった10種の分布を、階層ベイズモデルを用いて解析した。このモデルでは、茶草場およびコドラートの2つの空間スケールを考慮した。茶草場レベルでは、耕作履歴と空間ランダム効果の影響を想定した。空間ランダム効果の相関の強さは、茶草場間の距離が増加すると指数関数的に減少すると仮定した。コドラートレベルでは、コドラートの環境条件による影響を想定した。モデルの説明変数で説明できない残差に、種間の相関を想定した。  空間ランダム効果の相関が0~500 mの範囲で大きく減少したことから、種子散布のような空間的なプロセスの範囲は概して500 m以内であることが示唆された。土壌条件は、茶草場間、茶草場内のコドラート間で異なった。硝酸態窒素含量と2種の植物の出現確率の間には負の関係があった。カルシウム含量との間に正の関係が認められた植物は3種、負の関係が認められたのは1種であった。このように土壌条件に応じた種選別の存在が示唆された。一方、残差の相関は概して弱く、この調査地では種間相互作用は種組成に強い影響を及ぼしていない可能性が考えられた。


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