| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-013  (Poster presentation)

標高方向の種子散布は山系によって異なるか:動物散布樹木サクラ類での検証

*直江将司(森林総合研究所), 小池伸介(東京農工大学), 陀安一郎(総合地球環境学研究所), 加藤珠理(森林総合研究所), 菊地賢(森林総合研究所), 永光輝義(森林総合研究所), 綱本良啓(東北大学), 長沼知子(東京農工大学), 正木隆(東京農工大学)

今日では地球温暖化が急激に進んでおり、森林を構成する樹木がどのように応答するかに注目が集まっている。生物が温暖化から逃れる最も簡単で有力な手段は気温の低い高標高、あるいは高緯度へ移動することである。植物の場合は動物や風、水流などを利用して種子散布によって移動する。そのため、樹木が温暖化から逃れて移動できるかを判断する上では、種子が高標高・高緯度にどれだけ散布されているかを評価する必要がある。発表者らは種子の酸素安定同位体比を利用することで標高方向の種子散布(以下、垂直散布)を求める手法を開発した。本手法を動物散布樹木カスミザクラに適用したところ、ツキノワグマやテンが高標高に偏って種子散布していることが明らかになった。しかしながら、垂直散布の距離や方向は山系の地形や動物相によって影響を受ける可能性が考えられるため、その一般性を評価する必要がある。
そこで本研究では、山系間で哺乳類によるカスミザクラ、ウワミズザクラの種子散布を比較評価することを目的とした。調査地は阿武隈高地(北茨城市)、足尾山地(日光市)、関東山地(奥多摩町)の3地点である。阿武隈高地は起伏がゆるやかで、調査地周辺の最高地点は1000m以下である。また、ツキノワグマとニホンザルが局所絶滅している。足尾山地は起伏が激しく、最高地点は2000m以上である。関東山地はさらに起伏が激しく、最高地点は2000m以上である。足尾山地と関東山地ではツキノワグマとニホンザルを含め、豊かな哺乳類相が維持されている。これらの3地点において2㎞以上の調査ルートを設け、ルート沿いで発見した哺乳類糞を採取し、糞中の種子の酸素安定同位体比から垂直散布を評価した。発表では、哺乳類各種と全体の垂直散布を山系間で比較することで、地形や動物相が垂直散布に与える影響を議論する。


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