| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-021  (Poster presentation)

草原再生過程における草原性植物の進入と種子の供給

*増井太樹, 津田智(岐阜大・流域研)

半自然草原では管理放棄により樹林化が進み、その結果、かつて半自然草原で見られた多くの草原性植物が絶滅危惧種として取り上げられている。そのため、種多様性の高い草原の復元を目指した草原再生が各地で行われている。ヨーロッパ地域の草原再生過程では管理放棄されてから10年ほどで草原性植物の再生のポテンシャルが低下するといわれているが、日本ではその事例とは異なり、放棄されて10年程度の樹林では日本の半自然草原の構成種の中には長期的シードバンクを形成する種が多数存在し、それらが群落の再生に寄与するといわれている。しかしながら、さらに長期間管理放棄された場所では、草原性植物の埋土種子が減少している可能性が考えられ、草原群落の再生には近隣からの飛来種子の持つ役割も大きいことが予想される。そこで本研究は、現在でも管理が行われている半自然草原に隣接する管理放棄後約40年経過したミズナラ林の伐採前および伐採後3年間の草原性植物の状況を植生調査と個体数調査により明らかにするとともに、近傍の草原から飛来する種子をシードトラップ法により明らかにし、その役割について考察した。植生調査および個体数調査の結果、草原性植物のうち伐採前から林内に残存していた草原性植物は伐採後に個体数が増加し、残存個体からの栄養繁殖または種子繁殖により増加していることが明らかとなった。また、樹林伐採前は確認されなかったヤマハギが伐採後に確認されたことから埋土種子由来と考えられる種も存在したが、そのような種は少なく、管理放棄後40年経過した場所では埋土種子による草原再生は難しいことが考えられた。また近隣の草原からの飛来種子を調査したところ、草原性植物の種子は1種しか確認されず、飛来種子からの草原再生も迅速には進まない可能性が示唆された。


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