| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-030 (Poster presentation)
ヒノキ一斉人工林には,林分の過密化に伴い下層植生が衰退し,表土流亡が発生しやすくなるという森林管理上の問題がある。表土流亡の抑止には植生回復が有効であるが,それに対する間伐の効果が低かった事例も報告されている。また,下層植生の間伐への初期の応答については研究例が多いが,それを長期にわたって調査した事例は少ない。そこで,本研究では間伐(定性間伐,群状伐採)後のヒノキ人工林において,間伐が光環境と下層植生に及ぼす影響を検討するため,岐阜県南部に設置した調査地において間伐後8年間の状況を調査した。
調査は3箇所の定性間伐林分と,立木を数本まとめて伐採することにより林冠に20m2 程度の小ギャップを設けた1箇所の群状伐採林分で実施した。各調査地には6~21箇所の小方形区(1m2 /個)を設け,相対散乱光強度および下層植生の樹高,種組成,地上高0.6m以下の植被率を継続調査した。
林床の相対散乱光強度は間伐後に大きくなった。また,短期(~5年)的には,下層植生の最大高は年々高くなり,平均植被率は増加した。一方,間伐8年後の相対散乱光強度は,群状伐採林分では間伐直後と比べて低下しなかったものの,定性間伐林分では大きく低下した調査地もみられた。また,群状伐採林分において,下層植生の樹高は引き続き高くなったが,定性間伐林分では成長が停滞した。調査期間中の出現種をみると,間伐率が全調査地中で最も低かった調査地を除き,キイチゴ類などの先駆性種が一時的に増加した後に衰退した。その後,ヒサカキやソヨゴなど耐陰性の高い種,および調査地によってはシダ,ササ類が増加する傾向がみられた。間伐8年後の平均植被率は,群状伐採林分で80%,定性間伐林分で10~50%であった。この時点で,定性間伐林分では植被率50%(表土流亡の抑止効果が特に高い)に満たない小方形区が多かった。