| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-065 (Poster presentation)
葉フェノロジーは、植物の炭素獲得戦略を理解する上で重要である。林床では、上木によって遮られた少ない光を獲得するために、効率良く葉を配置しなければならない。落葉性や常緑性の林床植物が多い中、ナニワズは夏に葉を落とすというユニークな特性を持つ。そこで、開葉・落葉の実態を把握し、その個体間・年々変動を明らかにするために、複数の幹の葉数を記録した。
調査は森林総合研究所北海道支所の羊ヶ丘実験林で2012年6月から始めた。落葉広葉樹林内の林床に生えている12幹と開放環境の樹木園に植栽されている2幹(の一部)に目印を付け、1週間から10日の間隔で定期的に葉数を記録した。調査期間中に観察幹の一部が枯れたので、新たに観察幹を増やして観察を続けた。
落葉日(葉数が0になる日)は通日平均188日で、最短171日、最長206日と個体によって1ヵ月ほど差があった。夏開葉日(葉を着け始めた日)は平均243日、最短226日、最長259日とこちらも個体によって1ヵ月ほど差があった。落葉期間は平均52日間、最短21日間、最長76日間と個体間差が大きかった。明瞭な年々変動は見られず、落葉日・開葉日の個体間順位はほぼ一緒であった。開放環境の樹木園に植栽された2個体も林床の観察個体とほぼ同じ季節変化を示した。春の開葉過程では135日前後に最多葉数となるが、そのピーク日は年々変動を示した。最多葉数日はその日までの有効積算温度と相関があった。
夏の落葉・開葉過程は年々変動しないことから日長が影響していると推測される一方、春の開葉過程には有効積算気温が影響していることが示唆された。