| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-070  (Poster presentation)

ハワイフトモモにおける葉トライコームの適応的意義Part4―光合成における葉面保水効果―

*甘田岳(京大・農・森林生態), 小野田雄介(京大・農・森林生態), 小南裕志(森林総研), 北山兼弘(京大・農・森林生態)

ハワイフトモモはハワイ諸島に広く分布する優占樹種であり、多様な環境に適応して形質が著しく多様化し、適応進化のモデル樹木として注目されている。形質の多様性の中でも、葉トライコーム(葉毛)量の変異は特に顕著であり、本種の適応を理解する上で葉トライコームの生態学的意義の解明は極めて重要である。湿潤地では無毛個体も存在する一方で、乾燥した高標高地ではトライコームが葉重量の40%を占める個体も存在する。著者らはこれまで、葉トライコームのガス拡散抵抗・葉温・被食防衛への影響を評価してきた(Part1-3、日本生態学会62-64th)が、乾燥適応メカニズムへの貢献が十分説明できていない。本種の葉トライコームは水滴の形成されやすいウール状であることから、本研究では葉面保水に注目し、仮説「①葉トライコームは葉の濡れを促進し、②葉面湿度の上昇に伴って蒸散を抑制する一方で、③気孔が開きやすくなり光合成を促進する」を検証した。調査はハワイ島マウナロア山麓における、有毛個体の優占する標高2000mにおいて行った。葉の濡れ時間は、濡れると変色する紙を用いて評価した。また、この濡れ時間の評価と同時に、自作の樹液流センサーによって蒸散速度を間接的に示す樹液流速度を、自作チャンバーによってシュート単位の光合成速度をそれぞれ測定した。葉の濡れは、夜間、降水や霧の最中や直後といった湿度80%以上の時に維持され、濡れ持続時間は葉トライコームによって最大2時間程度長くなった。本発表においては、こうした葉トライコームによる葉の濡れ持続効果と共に、ガス交換への影響を評価した結果を示す。


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