| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-084  (Poster presentation)

間伐後のヒノキ人工林における葉寿命の推定

*稲垣善之(森林総研四国), 深田英久(高知県庁), 渡辺直史(高知県森技センター), 中西麻美(京都大学), 鵜川信(鹿児島大学)

ヒノキは、常緑性の針葉樹であり、樹冠には数年分の葉が存在する。ヒノキの葉寿命は環境条件や間伐などの森林管理によって変化することが予想されるが実態は明らかでない。これまでヒノキの葉量推定は、定常状態を仮定して、樹冠葉量を落葉量で割って推定された。しかし、間伐後には樹冠葉量が増加するため、定常状態を仮定することができない。本研究では、高知県の間伐率の異なる6つの林分において、2つの方法で間伐後15年間の葉寿命を推定した。方法1では、葉の生産速度と枯死速度がそれぞれ一定と仮定して葉寿命を算出した。方法2では、葉量と生産速度がほぼ定常状態であることを仮定し、樹冠葉量の平均値を葉の生産速度と枯死速度の平均値で割って葉寿命を算出した。方法1、2による6つの調査区、3つの時期における葉寿命の平均値(範囲)は、それぞれ、5.2(3.8~8.0)年、5.1(3.7~8.0)年であった。方法2の葉寿命は方法1よりもやや小さい値を示し、方法1に対する方法2の比は平均で0.99であった。初期葉量に対する葉の生産量が大きいほど、葉の生産量/枯死量の比が1から離れるほど、方法2の葉寿命が過小評価になることが示された。ほとんどの調査地では方法1に対する方法2の比は0.98~1.00であり、過小評価は無視できる程度であったが、低標高の50%間伐をした林分の1-4年後に、この比が0.92となり過小評価となっていた。以上の結果より、葉の生産速度が大きく、葉の現存量の変化が大きい林分では、方法1によって葉寿命を推定することがのぞましい。


日本生態学会