| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-087 (Poster presentation)
温帯落葉樹林における樹木の開芽・展葉タイミングは個体の生産性に影響する主要因である。これまでに様々な温帯地域の落葉広葉樹において、同一種では高木に比べて実生や稚樹の開芽時期が早いこと、林冠閉鎖前に光合成を行うことで実生や稚樹の生存率・成長速度が大きくなっていることが示されている。一方で、一部の種では高さに応じた開芽タイミングが上記とは逆の傾向になる、あるいは傾向が見られないことも報告されている。しかし、これらの傾向が生じる理由については不明な点が多い。本研究では、北海道大学苫小牧研究林において11樹種の高さに応じた開芽タイミングの変化パターンを調べ、気象要因との関係を明らかにするとともに、既存の研究データを整理して、開芽タイミングの高さに応じた種内変異パターンの一般性を探った。
苫小牧の11種では、開芽タイミングは樹高3 m以下の稚樹ではやや早いものの、それ以上の高さでは変わらないこと、そのパターンは積雪量の多い年と少ない年で変わらないことが示された。さらに既存データを含めて開芽タイミングの高さに応じた種内変異パターンを整理して、①高さに応じたパターンが非線形であること、②系統による制約、③気温の垂直勾配の違い、④積雪量の違い、の4つが関連している可能性を調べた。その結果、比較する樹高によって差が出にくくなる可能性が示された(①)が、②—④では高さに応じたパターンの差を説明できなかった。ただし、極端な多雪地でパターンが変わる可能性についてはデータが少ないため、詳細な調査が必要である。