| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-088 (Poster presentation)
タイ西部カンチャナブリ県にあるタイ国立公園野生生物保護局メクロン流域研究ステーション内にある高さ40m森林観測塔(14o 34' 34"N 98o 50' 37"E)において、2005年から混合落葉林(熱帯季節林)の林冠定点映像を日々記録している。この映像の視野内には、ビワモドキ科のDillenia parvifloraの個体が多数写っている。このDillenia parviloraは、毎年乾季の2-4月に樹冠全体が花に覆われるが、その期間はわずか2,3日間である。
2004年-2016年の12年間について、この開花の時期を写真の目視により検出した結果、最も早い年で42DOY、遅い年では114DOYと、72日もの差があることが分かった。森林観測塔で連続観測している気象要素と年々の開花時期を比較した結果によると、12回確認された開花のうち、11回は開花の約10日前に、まとまった降水もしくは土壌水分量の増加が見られ、そのうち9回は本格的に乾季に入った1月以降で最初のまとまった降水であったことが分かった。種々の総観規模の気象データから、この乾季の雨は、タイの春一番ともいうべきものであって、日中の太陽の高度の変化やタイの地形、海の配置、メクロンステーションの地理的な位置が関わっており、エルニーニョ・ラニーニャの影響も受けていると推察される。