| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-218  (Poster presentation)

耕作を通した農家の害虫管理協力行動

*福井眞(早稲田大学)

地球温暖化の影響により農業では、侵入種の害虫の生息域拡大や在来種の害虫の越冬生存率の増加が問題となっている。加えて耕作放棄地の増加により、殺虫剤噴霧の対策が及ばず、侵入害虫の定着や在来害虫の個体数を増加させる危険性がある。両害虫の分散距離が十分に大きい場合には、近隣農家の耕作地にも害虫の食害が及ぶ。つまり、地球温暖化により各々の農家の営農活動は周囲の農家の利益により影響する可能性が出てきた。本研究は、農家の効用に対する害虫の被害の影響を明らかにするために、生態学的および経済学的プロセスを単純化されたモデルで示し、最適な耕作率をシミュレートした。結果、害虫個体群密度が、農家の意思決定として最適な耕作率に大きく影響した。また、害虫の越冬生存率が増加するにつれ、最適な耕作率の分岐が現れ、より高い耕作率から低い耕作率へのレジームシフトが生じた。本研究では、農家は耕作地での殺虫剤の使用により害虫の繁殖を避けることを介した一種の協力ゲームを行っている。農家は生産作物に影響する害虫をはじめとする負の生物学的要因をしばしば共有している。将来的に本研究の枠組みは、生産作物の管理に関する他の農業問題への適応が期待される。


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