| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-257 (Poster presentation)
外来植物の駆除は、別の外来植物の侵入を引き起こし、在来生態系の回復を阻害する可能性がある。この可能性を検証するために、小笠原諸島において外来樹種トクサバモクマオウの駆除後の外来樹種ギンネムの侵入が在来樹種の初期定着に及ぼす影響を野外実験によって評価した。ギンネムはアレロパシーによって他の植物の定着を阻害することで密な純群落を形成し、在来林への遷移を妨げることがしばしばある。
トクサバモクマオウが優占する森林において、同樹種の駆除を実施した。この駆除跡において、小笠原諸島の主要在来樹種(タコノキ、シャリンバイ、ヒメツバキ、モモタマナ)の実生を移植した。12地点において各々2つの実験区(1×2m)を設置し、各樹種サイズが異なる2個体の実生を移植した。2つの実験区のうち1つにギンネムの種子を播種し(以後播種区)、もう一方を対照区とした。移植実生の生残とサイズ(地際径、高さ、葉数)の変化を24ヶ月間測定した。
実験終了時の実生の生残率は、タコノキで100%、シャリンバイで77%、ヒメツバキで52%、モモタマナで98%であった。4樹種全てにおいて初期サイズが大きい実生の実験終了時におけるサイズは、初期サイズが小さい実生よりも大きい傾向があった。播種区における実生のサイズは、対照区よりも小さい傾向があった。この播種処理の有無による実生のサイズの違いは、タコノキでは初期サイズが小さい実生、シャリンバイとヒメツバキでは初期サイズが大きい実生、モモタマナでは初期サイズに関わらず検出された。
以上の結果は、トクサバモクマオウ駆除後のギンネムの侵入は、在来樹種の実生の成長を阻害し、この阻害の程度は在来樹種の実生のサイズに依存する、この依存の程度や方向性は在来樹種によって異なる、ということを示唆した。