| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-259  (Poster presentation)

近畿地方におけるアメリカオニアザミの分布

*藤井俊夫(人と自然の博物館), 長谷川匡弘(大阪市立自然史博物館), 横川昌史(大阪市立自然史博物館), 外来生物プロジェクトA(大阪市立自然史博物館)

 近年、外来種が都市部を中心に侵入拡大し、在来の生物群に影響を与えることが問題視されるようになってきた。都市部では、人為的な環境に適応した外来種が分布を拡大し、人間生活にも影響が及んできている。最近、大阪市内において目撃例が顕著になってきたアメリカオニアザミ(セイヨウオニアザミ)について近畿地方における分布の現状をアンケート調査及び現地調査によって明らかにすることを目的とした。
 標本調査から、近畿地方に侵入した時期を推定し、最近3年間の近畿地方における分布の現状を地図上に表示した。
 アメリカオニアザミは、北海道に牧草などの飼料にまぎれて1950年代に侵入したといわれ、葉に鋭いトゲを持ち、シカが食べない不嗜好性植物であるため、知床などでは大繁殖し、問題になっている。
 アメリカオニアザミの特性として、2年草なので、発芽から開花結実までの期間が短いこと、種子生産量が在来のアザミ類に比べて、けた違いに大きいこと(高さ2m以上に成長し、1株で数百の頭花をつけるので、種子生産は軽く数万のオーダーになる)。があげられ、空き地などにゲリラ的に出現するので、効果的な駆除が困難なことがあげられる。
 近畿地方では三重県で1963年に標本が採集され、1990年代後半から各地で見られるようになってきた。アンケート調査では、大阪、京都、奈良の都市部を中心に拡大しているが、山間部には、まだ侵入はわずかであった。しかし近畿地方ではシカの食害が顕著になり、在来の林床植物や草原生植物と置き換わることが予想され、今後の挙動が懸念される。


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