| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-260 (Poster presentation)
外来生物は、農作物被害、病原体の媒介、生態系の撹乱等、侵入先でさまざまな問題を引き起こす。特に、栄養段階の上位に位置する外来の食肉目は、捕食者として在来生態系に与える影響が大きい。本研究で対象にしたアライグマも在来生態系への負の影響が懸念されており、胃内容や食跡、観察による調査でカメ類やカエル類への捕食が確認されている。しかし、これらの既存の報告では限られた小スケールを研究対象とし、広域に在来生態系へのアライグマの影響を明らかにはしていない。
そこで本研究ではアライグマの捕食により最も影響を受けているグループの一つであるカエル類に注目し、兵庫県の広域スケールでアライグマが負の影響を与えるか明らかにした。兵庫県では1990年代頃からアライグマの生息が確認され、その後分布が拡大したことによって、アライグマの定着年数には地理的な勾配がある。対象としたのはカウント調査の容易な卵塊を産み、水田付近に生息するニホンアカガエルと、樹上性で水田周辺部に生息するモリアオガエルの2種である。目的変数としたニホンアカガエルの卵塊数は2017年2-3月に32の谷津で、各谷津の4-12枚の水田あるいは放棄田内でカウントした。モリアオガエルの卵塊は2017年7月に34の谷津で主に農水用の貯水池内でカウントした。説明変数として用いたアライグマの効果は、2003年度から2015年度の13年間の全農業集落を対象にした鳥獣害アンケートの回答から、生息情報が得られた年数を定着の指標として用いた。また、ニホンアカガエルは水田の農地整備が行われると生息数が減少することが報告されているため、農地整備に関する変数も考慮した。一般化線形モデルの結果2種ともアライグマ生息情報年数が大きいほど卵塊数が少ないことが分かり、広域スケールでアライグマからカエル類へ負の影響が示唆された。