| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-264  (Poster presentation)

効果的・効率的アライグマ防除対策の構築に向けて

*池田透, 鈴木嵩彬, 小林あかり, 槻田和史(北海道大学)

 特定外来生物アライグマ(Procyon lotor)は、日本全国に生息域を拡大して各地で対策が講じられているが、多くの自治体では対策の効果が見えない中で、農業被害対策としての捕獲事業だけが継続されている状況にある。その原因としては、アライグマにおいては目撃情報が不確かなために侵入初期の対策が遅れてしまうこと、かつ対策自治体間の連携が欠如しており、従来の在来有害鳥獣対策と同一の農業被害への対症療法的対策に終始していることなどが挙げられる。
 効果的・効率的なアライグマ防除対策を構築するためには、1)外来種対策の基本的考え方の社会的普及・啓発を進め、農業被害対策からの脱却を図ること、2)生息密度との相関が確認されているCPUEを生息状況指標として用い、繁殖データから科学的に捕獲目標頭数を決定して捕獲を継続し、まずはCPUEの低下を目指すという根本的なシナリオの転換を図ること、3)未侵入もしくは侵入初期の地域では、地元の環境NPO等との協力の下に、確実な初期侵入情報検知体制を構築すること、などが必要であると同時に、4)いたずらに根絶を目標とせずに、まずは堅実に地域的制御を目指すこと、5)国・都道府県・市町村・地域住民・研究者の明確な役割分担による協働体制の構築というhuman dimensionへの配慮も必要となる。また、従来の対策は農業被害の発生する人里での捕獲対策に終始していたが、山林や県境・市町村境等の人手をかけられない地域においては、誘因餌の不要な巣箱型ワナの導入など、新たな技術開発による対策オプションも考える必要がある。
 外来種防除対策という課題を突きつけられている全国の自治体は、どこも予算不足という問題を抱えているが、全国に拡大した外来種対策は長期化せざるを得ず、防除事業を進めながらデータを蓄積し、実現可能な制御を目指していく工夫が不可欠となっている。


日本生態学会