| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-265 (Poster presentation)
侵入害虫根絶事業の最終段階においては、対象害虫の根絶を高い信頼性を持ってすみやかに判定する方法が必要とされる。これまで根絶確認の際には、久野(1978)の方法が用いられてきた。すなわち、寄主植物調査における連続46050回の非寄生データにより、寄主植物への寄生率が10000分の1以下であると危険率1%で判定できることをもって害虫密度がゼロであると見なす方法である。この方法は、対象害虫の個体数を直接推定しているわけではないという難点があるものの、その簡便性から、近年では沖縄県久米島でのアリモドキゾウムシ根絶事業においても利用された。今回我々は、この方法をベイズ化することにより、根絶確認をさらに効率的に行う方法の開発を試みた。すなわち、久野(1978)の方法が想定する状況とは異なり、実際の根絶確認調査においては、(1)寄生率の高い季節を中心に数ヶ月にわたって寄主植物のサンプルが集められていること、また、(2)根絶確認調査に先立って、沖縄県による防除効果確認調査が全く同じ方法によって数ヶ月間にわたって行われている。ベイズ化によりこの2つの要因を寄生率の推定に組み込むことができた。これにより、例えば野生寄主であるノアサガオの調査によって根絶確認を行う場合、毎月5000本のサンプルを調査するとすれば、これまでの方法では根絶確認までに9ヶ月以上かかる計算であるが、寄生率の高い時期に調査を行うことを考慮すれば3ヶ月程度で、さらに事前調査の情報も組み入れれば2ヶ月程度で同等の結果を得ることが出来ることがわかった。