| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-13 (Poster presentation)
エゾサンショウウオの幼生を飼育していると、成体まで順調に成長する個体といつまでも成長しない個体がいる。私たちはこの成長しない個体は他のサンショウウオに共食いされるために生まれたものであり、その役割は孵化する順番に関係すると考えた。
北海道江別市郊外の森林で採取した卵塊から3日間で孵化した個体を一個体ずつに分けて飼育し、孵化した日付ごとに30匹選び、2ヶ月あまり継続的に体長を測定した。しかし、3日間で孵化した個体のうち最も成長したのは2日目に孵化したサンショウウオであり、先に孵化した個体の方が成長するわけでもなく、成長の差が孵化の順番によるものではないということがわかった。
このことから1日目、3日目に孵化した個体は生存個体のエサとしての役割を果たし、2日目に孵化した個体は生存しやすく、成体になりやすいことがわかった。また、体長を測定した集団はいずれも成体になるのに半年以上を要したが、共食いをさせた個体では2日目に孵化した3個体のみ1ヶ月程度で成体になった。
エゾサンショウウオは産卵の際にメスの卵塊に複数のオスが群がるため、同じ卵塊の個体でも父親が異なることがある。このことから、幼生の役割は孵化の順番ではなくそれぞれの集団の父親の遺伝が子の役割に影響する可能性が考えられる。今後は父親の遺伝が子の役割に影響するか調べたい。
生まれつき成体になることができない個体が存在するのであれば、効率よく共食いをさせることで、より確実にサンショウウオを成体にすることができる。この研究を準絶滅危惧種のキタサンショウウオの繁殖に応用ができるものと考えた。