| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-14  (Poster presentation)

ヒダサンショウウオの産卵行動と越冬幼生が現れる要因を探れ!

*三宅遥香(岐阜県高富中/生物部)

昨年,世界初のヒダサンショウウオの産卵行動をビデオに撮り発表した。今年は,産卵行動とスニーカー行動について,写真と図で分かり易くまとめた。メスが仰向けになり,卵嚢をブロックに接着した後,オス同士の争いが始まった。スニーカーであるオスが争いに勝ってしまうというまさかの展開から,子孫を残すための闘魂を見ることができた。この冬も,2例の産卵行動の撮影に成功した。また,砂利の中での産卵行動の最新情報を報告したい。さらに,安心して産卵できる環境を作り出した産卵水槽を,水温や水質,卵嚢を産み付けるブロックの斜面角度等を含めて,産卵行動のビデオから検証し,新たな改善に繋げた。
越冬幼生が現れる要因を探れ!の研究では,大桑の幼生は生まれた年に全個体が変態するが,10km離れた寺尾では幼生の一部が越冬している。昨年度は,越冬幼生は成長速度が遅いと考え,「水温,水質,遺伝」について,理科室の水槽で研究を行なった。その結果,卵や幼生の成長速度は「水温」に関係していることがわかった。しかし,越冬幼生が現れる直接の要因はわからなかった。今年度は,孵化したばかりの大桑と寺尾の幼生を,一匹ずつタッパーに入れ,与える餌の量を変えて育てた。その結果,餌の量が多い幼生は全個体が変態したが,少ない幼生は越冬幼生になった。「餌を十分食べられない幼生は,越冬幼生になる。」ことが確認できた。文献には,変態時期について,a.生まれた年に全個体が変態。b.年内に変態する個体が多いが,一部は越冬して翌年に変態。c.年内に変態する個体は少なく,多数は越冬。d.全個体が越冬。の4つのパターに分かれるとある。私たちの研究から,越冬幼生のいない大桑でも,幼生の数多かったり餌の量が少なかったりすると,越冬幼生が現れると考えられる。同様に,寺尾においても幼生1匹当たりの餌が十分にある年は,越冬幼生がいなくなると考えられる。


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