| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-15 (Poster presentation)
[PH-15]埼玉県内の河川における外来生物カワリヌマエビ属の侵入
埼玉県立川越女子高等学校
埼玉県内に生息する淡水エビは、ヌカエビ・テナガエビ・スジエビの3種類である。近年、本来埼玉県にはいないカワリヌマエビ属が分布を広げている。私たちは2015年より調査を始め、川越市を起点とする新河岸川、入間川、荒川、小畔川、不老川、赤間川、砂川堀、柳瀬川、高麗川全ての川にカワリヌマエビ属の侵入を確認した。在来種ヌカエビは、高麗川中上流・荒川上流、新河岸川近くの調整池で確認され、いずれも外来種と在来種が共存していた。それ以外の調査地点は100%外来カワリヌマエビ属で占められていた。mtDNAを調べたところ、国内外来種となる西日本分布のミナミヌマエビではなく、中国・台湾・韓国から釣り餌用に輸入した複数の種が含まれるカワリヌマエビ属であることが分かった。減少した在来種のヌカエビは埼玉県レッドブック(2008)で絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。在来種が生息する高麗川天神橋付近では、水際の植生地帯に在来・外来が共存し、季節によりその生息数比は変化していた。しかし、この高麗川から水を引いている巾着田の用水路内はほとんど外来カワリヌマエビ属が生息していた。10月には、水深5cmで底が砂利の水路に無数の外来カワリヌマエビ属が見られた。在来種はこのようなところには生息していない。在来種ヌカエビは、繁殖が盛んな8月では平均体長が20mmであるが、繁殖していない1月は平均体長が30mmとなる。外来カワリヌマエビ属は1月でも8月でも様々な体長の個体が見られ、その平均体長は18mm。飼育個体では体長15mmで抱卵個体がいることから、外来カワリヌマエビ属は水温が高ければ季節に関係なく繁殖できると考えられる。今後調査地を高麗川巾着田付近とし、在来種と外来種の生息数変化とともに、水質や水温、流速、水深など生育条件との関係をつきとめ、在来種の保全につなげていきたい。