| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-16 (Poster presentation)
北海道の千歳川支流である輪厚川で魚類を中心とした生物の調査をしてきた。その調査の1つとして2014年から毎月1回、堰堤の上流1か所(道都大前)、下流2ヵ所(学校下・交番横)の計3か所の調査地点を定め、D型手網で生物を捕獲する定点調査を行ってきた。捕獲した生物の種名、体長、捕獲数を記録した。
ここで着目した底生魚のフクドジョウ、ウキゴリ、シマウキゴリは春から8月にかけて体長が大きくなることがわかった。これら3種の小型個体が8月に交番横で採れていることから、8月より前の暖かい時期に産卵していると考えた。しかし、学校下ではこれを確認できなかったことから、産卵環境及び小型個体の生育環境に交番横が学校下より適していると考えられる。今後は、これらを視野に入れた調査を行っていこうと思う。
定点調査の結果から、フクドジョウは堰堤に関係なく輪厚川全域に生息しているが、ウキゴリ類は堰堤より下流側にしかいないという分布の違いがあることが判明した。その原因が移動習性の差にあると考えた。「フクドジョウは回遊を行わないため、堰堤を境に上流側と下流側でそれぞれ独自の個体群を生成しているが、回遊を行うウキゴリ類は堰堤を下降し、再び戻ってきた際に堰堤を上ることができないため堰堤より下流側にしかいない」と考えた。この仮説を明らかにするため、2017年7月から罠を使った底生魚3種の移動に関する調査を行なった。なお、罠は川底から幅30cmの網を川にV字型に横断するように張り、その中心に返しのついた籠を置いた。これを上流、下流向きに対になるよう月に一回3日間設置し、捕獲した魚類の種名、体長、捕獲数を記録した。
これまでの罠調査では、7、8、10月が上流への移動が多く、11、12月は捕獲個体数が減少した。仮説を明らかにするために、今後も調査を継続していきたい。