| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-17 (Poster presentation)
【目的】玉川学園サンゴ研究部は、7年前から白化していくサンゴを守るという理念のもと活動をスタートした。石垣島八重山漁協に提供していただいたサンゴを使用し、教室内で育成・成長させ、一昨年、成長した株の石垣島への移植活動に成功した。サンゴを飼育するためのメンテナンス技術も年々向上し、実験環境も充実してきた。そのため、サンゴがより早く健康に育つ環境を探り、保全活動にさらに貢献できるようサンゴの生態の解明をすべく、実験・観察に取り組んでいる。今回はサンゴに当てる光の色・塩濃度・サンゴと共生する褐虫藻の温度効果に注目して実験を行い、サンゴの成長に最も適する環境を考察した。【方法】サンゴ生息域の平均条件に合わせた状態で育てたサンゴ(control)と、光、塩濃度を変異させた状態で育てたサンゴの成長率を比較する。また、温度効果については、サンゴと生態の近いイソギンチャクを用いて、水温が原因のイソギンチャクと褐虫藻の共生状態の変化を観察する。これにより白化(宿主から褐虫藻がいなくなる現象、この状態が続くと宿主は間も無く死亡する)の進捗状態を知ることで、海水温度の上昇に伴っておこる白化の対策を練ることに役立てる。【結果】基準条件と比べて高濃度の海水で育てたサンゴの成長率が高いという結果が出た。光条件に関しては、赤色の光と青色の光はサンゴの成長に大きく関わり、紫外線と緑色の光は殆ど影響を及ぼさないという結果だった。温度効果については、2月上旬現在、実験途中で結果が出ていないため省略する。【考察】高濃度の海水では、サンゴの骨格形成に必要なCaイオン濃度も高いため、成長しやすい環境ができていたと考えられる。光条件に関しては、褐虫藻のもつ光合成色素であるクロロフィルa.cの吸収スペクトルに関係のある結果が出たことで、サンゴの成長は褐虫藻の光合成に依存していることがわかった。