| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-21  (Poster presentation)

糞虫の個体密度は繁殖に影響するか?

*西山弘和(北海道稚内高等学校), 古川勇気人(北海道稚内高等学校), 杉本賢人(北海道稚内高等学校), 杉浦友哉(北海道稚内高等学校), 中出雄翔(北海道稚内高等学校), 髙橋諒介(北海道稚内高等学校), 住岡凜々花(稚内市立稚内中学校)

 哺乳類の糞という限られた資源を利用して繁殖をする食糞性コガネムシ類(以下、糞虫)において、同種の密度はどのように繁殖に影響するのだろうか?
 本研究では、巣穴を掘り、糞を丸く固めた糞球に産卵するTunnellersの一種であるマエカドコエンマコガネ(Caccobius jessoensis)の個体密度が、造巣行動(糞球を埋めるための巣穴の掘削)と繁殖成功度(子世代成虫(以下、子)の数と体の大きさ)にどんな影響を与えるのかを調べた。
 両面が透明プラスチック板の箱型飼育容器に土と牛糞を入れ、親世代成虫(以下、親)を雌雄1ペア、2ペア、3ペア、4ペアを入れた実験区を設定した。実験開始後、2日毎に遮光した部屋で飼育容器の両面をスケッチして糞球の数や位置を計測した。子が羽化した時点で飼育容器の透明プラスチック板を剥がし、巣穴の総延長を測定し、子の数と体重、前胸背板幅と性比も調べた。
 実験の結果、個体密度が高くなるにしたがって、ペアあたりの子の数が激減することや、子のサイズが雌で小さくなることが確かめられた。これらの結果は、本種では個体密度が高くなると、哺乳類の糞という有限な資源を巡る競争が生じることを示している。さらに本研究では、個体密度が高くなると親が掘削する巣穴が短くなることがわかった。これは、糞虫において他個体との相互作用を回避するような巣穴掘削戦略が存在することを示唆する新しい発見である。


日本生態学会