| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-24 (Poster presentation)
カワニナ属貝類は,二生吸虫の第一中間宿主である.二生吸虫が生活環を形成するには第二中間宿主や終宿主となる他の生物が必要である.二生吸虫に寄生されたカワニナは繁殖能力を失うといった影響を受けることが多い.そこで本研究では,環境の差異が二生吸虫相や寄生率に差異をもたらすのではないか,と仮定し,環境の異なる2地点においてカワニナの二生吸虫類寄生率及び魚類相・鳥類相を調査した.
調査は東京都港区の有栖川宮記念公園内の小川及び東京都あきる野市の秋川本流,小和田橋付近を調査地点とし,2017年11月から2018年2月まで,各地点で5回ずつ,1回の調査につき約100個体のカワニナを採集した.有栖川宮記念公園の小川は川幅約1mの都市公園内の閉鎖水系であり,秋川の小和田橋付近は川幅約10mの自然河川の中流域にあたる.採集したカワニナは,伊藤(1962)による自然遊出法を用いて二生吸虫のセルカリアを検出及び同定し,カワニナの二生吸虫寄生率を測定した.
有栖川宮記念公園のカワニナからはNotocotylus magniovatusのセルカリア1種が検出された.この吸虫は第二中間宿主を欠き,カモなどの終宿主に寄生する(伊藤,1962).有栖川宮記念公園にはクロダハゼやコイ飼育型などが生息しているが,他の二生吸虫の第二中間宿主となる魚類が少なく,カルガモが多く飛来することから,この吸虫のみが見られると考えられた.一方,秋川のカワニナからはAsymphylodora innominataなどのセルカリア2種が検出された.この吸虫はウグイやアブラハヤなどを終宿主とする(Shimazu,2016).秋川には終宿主となる魚類が多数生息していることから,この吸虫が多く見られると考えられた.2017年11月から2018年2月の段階で,カワニナの二生吸虫寄生率は有栖川宮記念公園で2.70%(445個体中12個体),秋川で3.44%(320個体中11個体)と,秋川の方が高かった.また,二生吸虫の感染がカワニナの繁殖に及ぼす影響を調査するため,感染個体と非感染個体で胎児殻数の比較についても発表する.