| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-25 (Poster presentation)
糞虫(食糞性コガネムシ類)は自然界において哺乳類の糞の分解者として重要である。糞虫は糞に産卵し繁殖するが、その産卵様式により3つのタイプに分けられる。糞直下の土中に巣穴を掘り、糞を丸く固めた糞球に産卵するTunnellers、地表面で糞球を転がし、地下に埋め込み産卵するRollers、糞球は作らず糞塊に直接産卵するDwellersである。TunnellersとRollersの子にとって糞球は蛹化するまでの唯一の餌資源である。
本研究はTunnellersの一種マエカドコエンマコガネ(Caccobius jessoensis以下、マエカド)について糞の質(糞種と鮮度)が繁殖行動に影響するかを調べた。
プラスチックポット(高さ20cm:マエカドの巣穴の最深長)に土壌を入れ、その上に糞30gを置き、マエカドを1ペア入れる。糞種は乳牛、シカの2種類で、それぞれの糞種について新鮮な糞と古い糞(排泄後1週間)の4つの実験区を設けた。
これら4実験区について、それぞれ計10ペアずつを室温、恒暗下で10日間飼育した。飼育後、コップから土壌ごと取り出し、繁殖行動を評価するため、糞球の個数、大きさ(長径・短径)、質量を測定後、糞球を割り産卵率を調べた。
糞球の大きさ(長径・短径)と質量は、糞種と鮮度を変えても差はなかったが、糞球の個数はシカ糞がウシ糞に較べて少ない傾向があった。また、シカ糞の新鮮糞より古い糞で個数が有意に少なかった。
産卵率は糞種と鮮度で差はなく、約90%以上だった。
マエカドは産卵率が90%以上であることから、親の餌としてではなく、産卵のために糞球を作る。また、糞種によって糞球の質量や大きさを調節せず、子の数を減らしてでも子当たりの餌量を一定にする。シカ糞がウシ糞に較べて糞球数が少ないのは糞の固さによると考えた。シカ糞はウシ糞に較べ、水分量が少なく、乾燥が早いため、一層固くなり、糞球を作りにくくなるのではと考えた。