| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-26  (Poster presentation)

カワニナの研究~殻の環境変異の法則に迫る~

*水根一起, 仁科正徳, 西田俊哉, 木田大貴(岐阜県立岐山高等学校)

 カワニナは河川に生息する淡水性の巻貝であり、殻の形状や模様などで種の分類がされている。しかし、カワニナは環境変異が激しく同種でも殻の形状が異なることがあり同定が困難である。そこで私たちは、カワニナの生息している環境と殻の形状を比較することで環境変異の法則を解明し同定や種の分類をより正確に行えるようにすることを実験の目的とした。
 昨年度までの研究で、流れのある環境に生息するカワニナの方が止水に生息するカワニナより螺層角が大きくなると結論付けた。しかし、河川の流速の違いによる螺層角の変異の法則は明らかになっていない。本研究では糸貫川に生息するカワニナを研究対象とした。糸貫川を上流から下流まで下りながらカワニナを採集し、流速を測定した。採集したカワニナの螺層角は螺層周囲を用いて測定した。これらの相関を調べたところ流速が速いほど螺層角が大きくなった。次にカワニナの殻の特徴である縫合のくびれの数値化を試みた。縫合のくびれを決定する要因は「体層の丸さ」「縫合の重なり具合」の2つであると考え、これらを数値化することを試みた。殻の特徴がより顕著に表れている4種のカワニナを用いて、殻の丸さを数値化する方法を検討した結果、体層の真円度を求める方法が最も適していると考えた。縫合の重なり具合を数値化する方法を検討した結果、殻底の最上部の延長線で殻口を区切り上部と下部に分け全体に対する下部の割合を求める方法が適していることが考えた。これら2つの方法を用いて糸貫川の環境要因がカワニナに及ぼす影響について検討した。カワニナを採集した各地点の砂礫の粒径分布と真円度、縫合の重なり具合との相関を調べたところ、様々な砂礫が存在する底質ほど体層が丸く縫合の重なり具合が弱くなり、縫合のくびれが大きくなることが分かった。


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