| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-33 (Poster presentation)
北海道稚内市周辺で拾得したシロカモメ、オオセグロカモメ、ウミネコのカモメ3種とウトウの死体から骨格標本を作製した。この中から、頭骨の眼窩上陥凹部、竜骨突起、尾端骨が生息環境や採餌行動によって骨の形状が違うことを確認した。
眼窩上陥凹部の頭蓋骨に対する長さの割合と竜骨突起面積の体重に対する割合は、カモメ類よりウトウが大きかった。カモメ類の尾端骨は板状で弓型をしており後方で上に反り、薄い。しかし、ウトウは直線的で厚かった。
カモメ類とウトウの骨の形状の違いを生息環境、推進行動、採餌行動に関連付けて先行研究を基に、以下のように考察した。
①眼窩上陥凹部には塩類の排出器官である「塩類腺」がはまっている。カモメ類は塩類濃度の低い沿岸部に、ウトウは高い外洋に生息する。そのため、ウトウの塩類腺はカモメ類より発達し、眼窩上陥凹部が大きい。
②竜骨突起には翼を羽ばたかせる大胸筋と小胸筋が付着している。カモメ類は「羽ばたき飛行」を行うが、ウトウは「はばたき飛行」と「はばたき潜水」の両方を行う。
体重に対する竜骨突起の面積がウトウの方が大きいのは、抵抗の大きい水中で羽ばたき推進するために大胸筋と小胸筋が発達し、その支持体である竜骨突起が発達したからである。
③Felice.R. N. & O‘Connor. P. M. (2014)は尾端骨の形状と採餌方法を類型化し、関連付けた。このなかで、カモメ類は「水面採餌型」、ウトウは「潜水追跡型(翼)」に分類される。
今回得られた尾端骨の形状は、この類型化された尾端骨の形状と一致した。潜水追跡型のウトウの尾端骨が直線的な形状で厚みがあるのは、抵抗の大きい水中で舵取りの役目をするためである。