| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-34 (Poster presentation)
多摩川水系では国内外来種の侵入の報告が多くあり(国土交通省,2011他),交雑がタカハヤとアブラハヤにおいて示唆されている(西田,2010).本研究では,シマドジョウ種群の多様な模様の変異が見られる多摩川水系秋川において,在来種ヒガシシマドジョウCobitis sp.BIWAE typeC以外のシマドジョウ種群の侵入があり,交雑が起きているのではないか,と仮説を立て調査を行った.
調査は東京都あきる野市のJR武蔵五日市駅周辺で,小和田橋付近から下流部800mまでの秋川本流を調査地点とし,2016年1月から2017年2月まで12回捕獲を行った.捕獲個体はフェノキシエタノールで麻酔処理後,斑紋等を記録した.
ヒガシシマドジョウは尾鰭基底部に眼径より小さい黒色斑と,尾鰭に細かく4-6本の弧状横帯をもつという特徴がある(中島ほか,2012).しかし,武蔵五日市駅周辺の調査地点で捕獲した個体の中には尾鰭基底部の黒色斑が眼径より大きい個体や尾鰭の弧状横帯が太く4本未満の成熟個体等,その特徴に該当しないものも含まれていた.弧状横帯が3本以下の武蔵五日市駅周辺の個体の全長はニシシマドジョウ寄りの傾向を示した.秋川のヒガシシマドジョウには形態変異が起きており,理由として①秋川にニシシマドジョウ等の国内外来種が侵入・交雑した,②秋川に高次倍数体が存在する,③ヒガシシマドジョウが環境的または遺伝的な要因で変異した,の三つの可能性が考えられる.
そこで,①について検証するために,mtDNAのCytb領域を用いてPCR法による種判別を試みたところ,検証した秋川のサンプル31個体全てからヒガシシマドジョウのハプロタイプが検出された.このことから,外来のシマドジョウ種群が侵入していることは考えにくいが,より再現性の高いPCR-RFLP法による判別結果や,②について検証するための赤血球長径の計測結果からも考察する.