| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-45 (Poster presentation)
オオウバユリは10年程で開花個体となり、繁殖後枯死する一回繁殖型多年生植物である。本研究ではその生活史をつかむため、文献を参考にしながら調査を行った。
I.方形区調査: 夏緑樹林内に2m×2mの方形区を設定し、5月23日に生育する全個体の位置と全長、葉の枚数を記録した。その結果、非開花個体の全長ごとの分布に偏りがあり、全長と葉の枚数は正の相関関係にあることが分かった。更に開花個体の葉の枚数は非開花個体と比較して突出して多いことも分かった。一方、7月の調査では5月に見られた全ての非開花個体が枯れて確認できず開花個体のみが見られた。
Ⅱ.開花個体の生育過程調査: 開花個体のうち、5個体を週に一度、個体の全長、葉柄基部の高さ、葉と花実の様子を記録した。その結果、開花個体では葉より下の分岐しない部位「基部」が伸びきると、その上の「上部」が成長を始め、花期(7月)には完全に成長が止まるということが分かった。また、一般に「花期には葉がない」と言われているが、本調査では花期に葉は残っており、果実が実ってから落葉した。
Ⅲ.花期における開花個体調査: 花期に開花個体の生育段階と照度を記録した。その結果、花の数の多い個体は、葉の枚数は多かったが、照度とは相関がなかった。また、照度の高い場所に生育していた個体は、全長は大きめであったが、花の数、葉の枚数とは相関がないことが分かった。
Ⅳ.個体の状況と鱗茎(球根部分)に関する調査: 方形区外において開花個体を含む個体の全長、鱗茎の縦幅、横幅、体積、質量を記録した。なお、開花個体については栄養繁殖時に形成される娘鱗茎を計測した。その結果、葉の枚数が多い程鱗茎の横幅、質量は増加していた。また、鱗茎の横幅、質量と全長の間には正の相関があった。