私たち人類が直面している大規模な環境変化は、地球史上かつてないものである。過去5回引き起こされてきた生物の大量絶滅をへた現在、私たち人類こそが引き金となり、第6の生物大量絶滅の危機へと突き進んでいることが指摘されている。大量絶滅の原因となる人間活動は、遺伝子、個体、種（個体群）、群集から生態系レベルまで様々な階層に対し重層的に影響を及ぼし、その影響は幅広い時間や空間スケール・規模に及ぶ。ある階層で生じた撹乱が異なる階層の現象にまで拡がり、さらなる環境変化の連鎖を導いた場合、生態系の劇的な変化は全球レベルで生じると懸念されている。人間活動による環境変化が、階層を越えて変化の連鎖を引き起こすという嘗てない特徴をもつとした場合、その特徴を適切に考慮したうえで生物多様性の保全や管理を行わなければならない。本シンポジウムでは、環境変化が生物の種組成や遺伝的組成に同時に影響し、さらにそれらの結果のあいだにみられるフィードバック、すなわち、生態と進化のフィードバックが生じうる状況での保全・管理について考えたい。進化を考慮した応用生態学の歴史的背景を踏まえ、各講演者の専門的視点から本シンポジウムの位置づけを明確にする。