近年、生物進化と生態学的事象の間での同じ時間スケールでのフィードバック（eco-evolutionary dynamics, feedback）の重要性が明らかになってきている。それとともに、生物学諸分野の統合とそれによるさまざまな基礎研究の展開が進みつつある。また、それに呼応するように、「適応」や「進化」というキーワードを組み込んだ保全・管理・自然再生に関する論文がここ数年の間に急増している（たとえばevolutionary restoration ecology, adaptation network）。このような状況は、われわれ生態学者にとって、学問の蓄積と展開力が真に試される時代だと言える。本シンポジウムでは、遺伝的多様性と生態系機能、進化的救助、外来種管理、水生植物の保全、造林・森林管理という多様なトピックで、進化と応用を結ぶ最先端の話題が提供される。それぞれが、基礎生物学の立場からも応用の立場からも大変興味深い話題ばかりである。これらは、まち・景観・生態系に対して、集団遺伝学と進化生物学的な視点を組み込んで積極的にデザインするという試みが今後世界的に加速していくことを予感させる。それにむけて、保全・管理のような応用分野と、生態系での進化を扱う基礎分野の間の連携をより一層強固にすること、基礎研究のあり方、応用のフロントとのフィードバック・ループなどの課題について考えたい。