| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S03-1  (Presentation in Symposium)

大型水禽類のセンシティビティマップをつくる ー有用性とその課題ー

*関島恒夫(新潟大・農), 森口紗千子(新潟大・農), 向井喜果(新潟大・農), 望月翔太(新潟大・農), 尾崎清明(山階鳥研), 仲村昇(山階鳥研)

2030年までに現在の発電量の3倍程度までに再生可能エネルギーの割合を増やすという国の指針のもと、現在、風力発電や太陽光発電の建設が全国的に進められている。特に、北海道道北地方や東北北部は、世界的に見ても風力発電に適した風況状況にあることから、急速に多数の風力発電事業が進められている。一方、これらの地域は、ガン類やハクチョウ類といった大型水禽類の主要なフライウェイでもあり、また、多くの中継地や越冬地が位置する一帯でもある。しかしながら、立地選定の段階において、必ずしも大型水禽類など希少鳥類に配慮した計画になっていないため、環境影響評価手続きの準備書段階で、始めて計画地が希少鳥類にとって重要な生息地であることが明らかになり、風車建設による鳥衝突を回避するために、事業計画が変更になることもしばしば生じている。センシティビティ・マップは、環境影響評価の前段階において潜在的な鳥衝突の発生を唯一の情報であり、それを考慮した事業計画の立案は鳥衝突の低減を図る最も有効な方法といえる。我々は、北海道から北陸にかけての日本海側に主要なフライウェイを持つガン類の一種オオヒシクイを対象に、主要な国内中継地・越冬地において生息場所情報および飛翔高度を取得することにより、潜在的な生息適地を予測するモデルを構築した上で、風車回転域を飛翔するリスクを考慮した中継地・越冬地のセンシティビティ・マップを作成した。加えて、中継地・越冬地間を結ぶ渡りルート上のセンシティビティ・マップの作成に向けて、オオヒシクイにGPS発信器を装着し、その移動経路および飛翔高度の取得を試みた。本講演を通し、オオヒシクイに代表される大型水禽類のセンシティビティ・マップ作成手順を紹介するとともに、作成における課題について考察する。


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