| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
シンポジウム S03-2 (Presentation in Symposium)
自然エネルギーの潜在的ソースとして風力への期待は大きく、そのリスクマップや影響評価の必要性が高まっているが、洋上風発施設への対応は特に遅れている。わが国沿岸には多数の海鳥繁殖地がある。繁殖中の親鳥は繁殖地から近くしかも餌の豊富な海域で繰り返し採食するので、風発施設建設による採食場所の消失は、採食効率が減ったり代替採食場所への移動距離が長くなったりするなどを通じて繁殖成績の低下をもたらす可能性がある。そのため、繁殖中の海鳥に対する洋上風発のリスクが高い場所を予測したマップを早急に整備する必要がある。北海道北部沿岸域は風発ポテンシャルが高い一方で、多数の海鳥が繁殖する海域でもある。我々は、この海域に位置する利尻島において、抱卵中のウミネコにGPSデータロガーを装着し、その移動軌跡を調べることによって重要な採食海域を明らかにした。さらに、別の年や別の場所でマップ作成を進めるための効率的な手法を検討した。ウミネコは着水して採食するので、まず、移動速度データから軌跡上の点を飛行と着水に分け、その分類精度を加速度データから検証した。次に、移動軌跡は在データであることを考慮して、2016年の着水場所の最外郭を対象範囲とし、点データをカーネル密度に計算し直した上で、2kmグリッドごとの採食密度を水温や水深などの環境要因から説明するモデルをGAMで構築した。さらに、2017年に利尻島と枝幸町でも同様の調査を行い、2016年のモデルによって、2017年や枝幸の採食密度分布を予測した。その結果、年や場所が変わるとモデルの再現性は半減することがわかった。これらの結果は、種のセンシティビティマップを作成するためには、年や地域差を考慮して、注意深くコストパフォーマンスの良いサンプリング計画を立てる必要があることを示唆する。