| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
シンポジウム S03-5 (Presentation in Symposium)
欧州などでは、風力発電施設の建設が鳥類に与える影響の低減策の一つとして、風力発電の導入に関して野鳥や自然環境に配慮した風車建設に適切な立地、または不適切な立地を示すセンシティビティマップ作りが、10年以上前から進んでいる。一方、日本ではその必要性が一部の団体や行政機関で認識されるようになり、最近になってようやく取り組みが始まったばかりである。そこで(公財)日本野鳥の会は、日本でもセンシティビティマップの存在が効果的な影響軽減策になることを示すため、これから国内で風力発電施設の建設が集中すると考えられる地域でマップを2016年から作成することにした。マップ作成にあたり、専門家による検討会を設置し、マップ作成の対象地や作成手法等について協議した。
マップ作成の対象地は、風力発電計画が集中する宗谷振興局の日本海側(稚内市西部、豊富町、幌延町、天塩町の一部)とし、利害関係者間の合意の取りやすさや立地選定の良し悪しの判断材料となるマップ作りを行うことにした。マップ作成にあたっては、約2年間の現地鳥類調査の結果を用いて、マップ作りの対象鳥種や脆弱性の表現等について検討した。マップ作りの対象鳥種は、絶滅危惧度が高く、国内外でバードストライク事例があり、アイルランドで考案された脆弱性指標が10ポイント以上で、集団飛来をする種かどうかなどに加え、地域住民へのアンケート結果により選出された地域重要種であるかといった情報を組み合わせ、判断した。その結果、マガン、ヒシクイ、コハクチョウ、ミコアイサ、アカエリカイツブリ、タンチョウ、オジロワシ、オオワシ、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、ケアシノスリ、コミミズク、マキノセンニュウ、ツメナガセキレイ、ユキホオジロ、シマアオジなどの繁殖地、渡り経路および中継地、大規模越冬地について、それらの重なりが多い場所を脆弱性が高い場所として示すことにした。