| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
シンポジウム S12-7 (Presentation in Symposium)
河川の定期的な氾濫により維持されていた広大な氾濫原環境は、河川改修や土地開発の進展により大きく減少している。こうした改変氾濫原の最も好適な再生手法は、洪水氾濫自体の再生であることは自明であるが、現在の人間生活の安全性や利便性を考えると実現は容易ではない。一方で、氾濫原環境の減少は世界的にも湿地性生物の多様性を大きく低下させており、実現可能な保全策を早急に検討する必要がある。そこで本発表で着目するのが“湖沼ネットワーク”である。現在の改変氾濫原では、河跡湖や後背湿地の名残りである湖沼が残存し、それら湖沼が水路や中小河川により水理的につながることで湖沼ネットワークを形成している。本発表では、十勝川下流域にひろがる農地景観を事例に、湖沼ネットワークが淡水生物の生物多様性の維持にいかに寄与するかを、種数、個体数、遺伝的多様性等の複数の指標を軸に紹介する。また、湖沼ネットワークにおける効率的な生物多様性保全を実現するためのアプローチについても、同時に話題提供を行う。