| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S15-8  (Presentation in Symposium)

今後の展望とまとめ

*西田貴明, 宮川絵里香(三菱UFJ)

生物多様性政策の方向性は社会的要請を受けて大きく変化してきた。1970年代以降、社会の環境に対する意識の高まりから、自然環境保全が法制度や事業の目的に位置付けられるようになり、自然再生・外来種対策を中心とした保全生態学が発展してきた。2010年には、COP10が開催され、自然の恵みの重要性に対する認識が世界的に広められた。国内では、人口減少・少子高齢化、気候変動・大規模災害といった社会課題と生物多様性の関係性に注目が集まるようになり、生態系を「守る」だけでなく「活かす」視点が、行政計画・施策にも盛り込まれつつある。このような流れを受けて、社会経済における生物多様性主流化にむけた、研究開発や産学官連携への関心が高まってきた。そして、今後の展開を考えるためには、将来の社会変化に伴う政策の在り方を予測し、同時に生態学分野の研究者・実務者の果たす役割を考えていく必要がある。例えば、2030年には、国内社会では少子高齢化・人口減少、大規模災害のリスクの高まり、AI・IoTによる産業構造やライフスタイル等の社会変化が予測されるが、一方で国際社会では持続可能な開発目標(SDGs)やポスト愛知目標の達成にむけた取組も求められてくる。このような社会変化を受けて、生物多様性施策ではこれまで以上に異分野連携、産官学協働によるアプローチが重要になるとともに、こういった状況下において、生態学において求められる研究成果やその活用方法も変化し、さらには生態学分野の研究者・実務者が活躍できる場もより多様化していくだろう。本発表では、様々な分野、セクターで活躍する演者の話題提供をもとに、生物多様性政策の未来像と、私たち生態学分野の研究者・実務者のこれからについて議論したい。さらに、若手研究者・実務者においては、議論を通じて社会・政策の変化を「じぶんごと化」し、各参加者の研究・実務の発展や、今後のキャリア形成に繋がるような学びを共有したい。


日本生態学会