| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S16-3  (Presentation in Symposium)

海底生態系における生物群集構造の変動

*河村知彦(東京大学大気海洋研)

海底生態系を主な生息場とする無脊椎動物には、一生を通じて特定の個生態系あるいはさらに狭い範囲の固有のハビタットに留まる種も多い。このような特定のハビタットを生息場としている生物群集の構造や変動を考える上で、群集を構成する生物各種が生活史を通じて、個生態系や各ハビタットをどのように利用し、どのような生態的地位を占め、他の動植物とどのような関係性を持つか、またそのような関係性に長期的・短期的な環境変動がどのような影響を及ぼすかを理解することが重要である。
 我々の研究グループでは、海底生態系のなかでも種多様性が高いと言われる藻場生態系における生物群集について理解するため、大槌湾長根、牡鹿半島泊浜、相模湾長井の潮下帯岩礁藻場において、代表的な大型無脊椎動物であるアワビ類、サザエ、ウニ類、モガニ類各種の生息場利用様式、食性、種間関係、およびそれらの成長に伴う変化を詳しく調べた。また、大槌湾長根と牡鹿半島泊浜においては、藻場生態系の構造に及ぼす海洋生態系のレジームシフトに伴う長期的な環境変動、および津波による突発的な大規模攪乱の影響についても検討した。さらに、厚岸湾、大槌湾、相模湾、瀬戸内海周防大島、沖縄本島金武湾、石垣島名蔵湾の合計6地点の藻場(海草藻場、海藻藻場、海草・海藻混生藻場を含む)を構成する植物と葉上性の小型無脊椎動物群集を詳しく調べ、特に様々なスケールのハビタットに着目して、葉上動物群集の変動要因や種多様性を決める要因を検討した。本講演では、これらの研究結果を基に、藻場の生物群集構造の特徴や変動要因について考察する。


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