| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S18-4  (Presentation in Symposium)

「永続性に進路を取れ!-遺伝子群集としてのメス鳥はなぜ浮気するのか?-」

*吉村仁(静岡大学), 安井行雄(香川大学)

永続性の概念は、変動環境での幾何平均適応度に基づく適応として、一定サイズの個体群内でパイを奪い合う通常の選択プロセス(算術平均適応度が相対的に高い戦略が固定に至る)とは異なる特殊なケースと思われてきた。しかし、変動環境では縮小する個体群の最後の1個体は絶滅するだけで、短期的な競争力よりも絶滅を回避して永続する戦略の進化を考えなければならない。Yoshimura and Clark (1991)は、長期的に変動する環境ではすべての生物のすべての形質の適応進化に永続性が関与することを示した。近年さらに、永続性を使わないと説明できない形質進化があることが分かってきた。1980年代後半にDNA Fingerprinting技術の発展に伴い、つがいをつくる鳥類(socially monogamous birds)の多くで、ペアのメスが普遍的に浮気(つがい外交尾ExtraPair Copulation)をしていることが報告された。しかしその原因は種ごとの特異的な要因が示唆されるばかりで、普遍的な説明はなされてこなかった。ここでは、遺伝的な異常(有害遺伝子や不和合性)か環境(射精の失敗や精子枯渇)に依存するかを問わず、オスに起因する繁殖失敗や不妊が起こる場合には、メスの浮気は適応的であることを示す(Yasui and Yoshimura 2018)。もしメスがペア雄としか交尾しないなら自分自身の子や孫がペアのオスの不妊によって全滅する可能性がある。そのため子孫の絶滅を回避するために、メスは積極的に浮気するのが適応的なのである。ここでは、幾何平均適応度の概念を使って、メスの浮気はbet-hedging適応(絶滅回避)であることを説明する。この例のように、生物進化では従来の短期的な算術平均適応度の最大化ではなく、長期的な幾何平均適応度に基づく永続性がより重要な適応であることをお話ししたい。


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