| 要旨トップ | ESJ65 企画集会 一覧 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T04  3月15日 17:30-19:30 A会場

生物多様性の保全計画:空間的優先順位付けの方法論と実践例

中臺亮介(琉球大・理学部/一財沖縄県環境科学C)

生物多様性の保全に費やすことのできるリソースは有限であり、限られたコストの下で、生物多様性を最も効果的に保全するように保護区を配置することが重要である。このような背景を受けて、社会経済的な負担と保全効果のトレードオフ関係の最適化を目指した「システム化保全計画(Systematic conservation planning:SCP)」の枠組みで優先保全地域の特定に関する議論が再定義され、より実務的な研究として発展している。
 初期の生物多様性の保全研究では、「1つの大きな保護区と多数の小さな保護区のどちらが生物多様性の保全に有効か」というSLOSS論争をはじめとして、個々の種個体群に着目するものではなく、その地域の生物多様性を俯瞰した保護区の設置が議論された。その後、このような全体論的な視点はすべての種の分布を調査し、情報を収集するということの難しさから、次第に個々の種個体群の保全を計れれば、その総体である生物多様性の損失は回避されることになるといった還元論的な見方にシフトしていくこととなる。
 しかしながら、近年、生物多様性に関する大規模データの蓄積と統計手法の発展により、世界的に全体論的な見方であるシステム化保全計画の枠組みの中で、保護区の設置問題が再び議論されるようになっている。本集会では、システム化保全計画の概念や方法論を解説した上で、日本初の大規模な実践例である「生物多様性おきなわブランド発信事業」について、日本全体・都道府県単位など異なる行政区で解析を行った際の優先保全地域の違いについて、対象とする分類群・多様性サロゲート(代替指標)がもたらす結果の違いとその解釈について、発表を行う。最後に生物多様性の情報が急速に増加していく中での生物多様性の保全の展望について議論したい。

コメンテーター: 久保田康裕(琉球大学)

[T04-1] 保全優先度指標の概念とアルゴリズム:かけがえのない地域をどう特定するか 藤沼潤一(琉球大・熱生研)

[T04-2] 生物多様性から神奈川県の自然保護エリアを考察 竹野内正寿(富士通研究所)

[T04-3] 保全計画立案プロジェクトの実践:生物多様性おきなわブランド発信事業 中臺亮介(琉球大・理学部/一財沖縄県環境科学C)

[T04-4] 保全計画における国と地方自治体の役割:国・都道府県ごとの空間的保全優先地域の特定 塩野貴之(琉球大・理学部)


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