| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
企画集会 T07-3 (Presentation in Organized Session)
植物ウイルスは植物の細胞内で増殖する微小寄生者であり、宿主の生理変化や枯死を引き起こすとともに、植物の個体群動態に影響を与えると考えられる。しかし、植物ウイルスの研究はこれまで農作物における病原性ばかりが注目されてきており、自然環境下におけるウイルスの生態学的な役割や振る舞いについての知見はごく限られてきた。
近年、植物ウイルスの自然環境下における多様性や分布、宿主との相互作用に焦点を当てた研究が増え始めている。しかしながら、rRNAなどを共通に持つ細菌や真菌と異なり、ウイルスには全種で共通して保存されている配列が存在しないため、宿主内に潜むウイルスを正確かつ網羅的に同定・記述することすら困難であった。
そこで近年注目されているのが、サンプルに含まれるRNA分子を網羅的に解析可能なRNA-Seq技術である。私たちは、RNA-Seqの低コスト化、多検体化に加え、ゲノムの性質に関わらずウイルスを網羅的に検出可能なRNA-Seqライブラリ作製技術の開発に取り組んできた。さらに、解析においてウイルスゲノムの1部分ではなく全長配列を考慮することで、RNA-Seqデータからの正確なウイルス種の同定を可能にした。
本発表ではRNA-Seqを植物のウイルス生態調査に利用する手法を紹介し、私たちが野外のアブラナ科植物集団において行った調査とその結果についても議論する。